運というものはわれわれ人間を、
まるで幼児に対するかのように弄ぶ(中略)
現在からは予測できない未来があるということであり、
良きことはより大きいほうを選択し、
悪しきことはより小さいほうを選ぶやり方でしか、
それへの対策はないと言いたいのだ。
古代カルタゴの名将ハンニバルの言葉。
紀元前200年代のローマを、宿敵として長年苦しめた孤高の天才戦術家。
彼が、戦術上の弟子とも言えるローマの執政官スキピオに対して、開戦前の会談で言った一説。
この「ザマの会戦」は、歴史上最高レベルの戦術家同士の戦いであり、ローマとカルタゴの存亡をかけた最後の決戦だった。
理を突き詰めたハンニバルが、理を超えた「運」について語るからこそ、この上ない説得力がある。
運命の手のひらの上では、いかなる天才の努力も、歴史のすべてをコントロールできるものではなかった。
ちなみにこちらの文庫版は、とても薄くて読むのが苦にならない。
途中の巻から入ってもいける。
もちらん最初から読むと、壮大な歴史にどっぷり入り込める。
「ローマの歴史には、人類のすべての歴史が凝縮されている」